この記事では米国選挙制度の仕組みを選挙に行ったことがない人でも分かるように解説していきます。
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個人投資家のコリーです。
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まずは主要政党の特徴を紹介していきます。
目次
主要政党の歴史と特徴
民主党(Democratic Party)
歴史:1828年に設立。最も古い政党の一つで農民や労働者階級の利益を代表する政党でした。1960年代、公民権運動を受け黒人などマイノリティの権利拡大を推進する法案(公民権法・投票権法)を成立させ、民主党は人種平等や社会的公正を重視するリベラル政党へと再編成され、アフリカ系アメリカ人や都市部の支持を集めるようになります。1980年代、民主党は福祉政策や環境保護を重視する立場を強化していきました。2000年に入りバラク・オバマ大統領が登場すると、多様性と社会的正義の重視し、LGBTQ+の権利、人種的平等、移民問題などのリベラルな政策を進めました。現在では都市部や若年層、女性、マイノリティから強い支持を受け、環境保護や経済格差の是正を重要課題としています。
イデオロギー:リベラル派。個人の自由と社会全体の公正さを両立させることを目指しており、自由競争を基本としながらも政府の介入を通じて弱者支援や社会の不平等是正を求め、社会福祉政策、環境保護、人権や多様性を重視しています。
主な支持層:都市部、若者、マイノリティ、女性。
代表的な大統領:フランクリン・ルーズベルト、バラク・オバマ、ジョー・バイデン
共和党(Republican Party)
歴史:1854年、ウィスコンシン州の反奴隷制活動家たちが共和党を結成。新しい州が合衆国に加盟する際、奴隷制の拡大を阻止することが目的でした。1860年、エイブラハム・リンカーンが初の共和党から大統領に選ばれ奴隷解放宣言を行いました。19世紀末には産業資本家や企業の支持を受けて、経済の自由化やビジネス優先の政策に傾斜していきます。20世紀には政府の介入を最小限にすべきという『小さな政府』と『経済の自由』を掲げるようになります。第二次世界大戦後、共和党は反共主義を掲げ、冷戦下での国家安全保障を重視しました。
リチャード・ニクソン(1969-1974)の政権時代には、南部の保守層に接近する「サザン・ストラテジー」を展開し、民主党から南部の白人層を取り込みました。ロナルド・レーガン(1981-1989)は共和党は小さな政府、減税、規制緩和を強く推進し「政府は問題の一部であって、解決策ではない」と述べ、経済を市場に委ねることを重視しました。ドナルド・トランプ(2017-2021)は、反グローバリズム、移民規制、アメリカ優先(America First)を掲げ、共和党の政策に大きな変化をもたらし、伝統的な経済保守だけでなく、ナショナリズムやポピュリズムの要素を導入し、既存のエリート層と対立する姿勢で新しい支持層を獲得しました。
イデオロギー:保守派。社会の伝統や秩序を重んじ、急激な変化よりも現状維持や漸進的な改善を支持する思想です。「保守的」であるとは、過去から受け継がれてきた価値観や制度に価値を置き、それを守りながら社会を発展させることを重視する姿勢を指し、自由市場経済、小さな政府、伝統的価値観を重視しています。
主な支持層:農村部、富裕層、高齢者、白人。
代表的な大統領:エイブラハム・リンカーン、ロナルド・レーガン、ドナルド・トランプ。
米国の選挙制度
米国の選挙制度は主に大統領を決定する大統領選挙と上院・下院議員を選出する議会選挙に分かれています。
・大統領選挙
・連邦議会選挙
大統領選挙
• 選出する役職:大統領・副大統領
• 選挙方式:間接選挙(選挙人団制度)
各州の有権者が投票し、州ごとに割り当てられた「選挙人」を獲得します。
• 大統領の当選条件:全米の選挙人総数は538人のうち、過半数(270人)以上の選挙人を獲得した候補者が当選する仕組みです。
• 任期:4年(2期まで再選可能)
• 開催時期:4年ごと、11月の第1月曜日の翌火曜日
選挙人団制度(Electoral College)
選挙人の割り当て
各州に割り当てられる選挙人の数は、基本的にその州の連邦議会(上院と下院)の議席数に基づいています。
各州割り当ての選挙人数:
選挙人数=上院議席数+下院議席数
上院議員は各州に2人ずついるため、各州には少なくとも2人分の選挙人がいます。
下院議員は人口に応じて割り当てられるため、人口が多い州は選挙人の数が多くなります。
例外として、首都ワシントンD.C.にも3人の選挙人が割り当てられています(憲法修正第23条による)。
選挙人の獲得方法
「勝者総取り方式(winner-takes-all)」が採用されており、州全体で最も票を獲得した候補者が、その州のすべての選挙人票を獲得します。例外として、メイン州とネブラスカ州は比例配分方式を採用しています。
大統領当選の条件
全米で538人の選挙人がおり、過半数である270人以上の選挙人票を獲得した候補者が大統領に当選します。
連邦議会選挙
連邦議会は、立法機関として機能する議会の一形態で、米国の連邦議会では上院と下院からなる二院制の議会です。
日本の国会に当たるのが連邦議会です。
上院の選挙概要
• 選出する役職:上院議員(全100議席/各州2人ずつ)
• 選挙方式:直接選挙
各州の有権者が投票して選出。
• 任期は6年で、2年ごとに全議席の約3分の1が改選。
• 上院は法律の審議に加え、大統領任命人事の承認権や条約の批准権を持つ。
上院の特徴
• 州の平等な代表を保障: 上院は、人口にかかわらず各州が同等の議席を持つため、特に小規模な州の利益を保護する役割があります。
• 外交・司法における重要な権限: 大統領の外交政策や司法官の任命に対する承認権を通じて、上院は行政部の活動を監視し、バランスを保つ役割を果たしています。
• 安定性と熟慮: 上院議員の任期は6年と長く、2年ごとに一部だけが改選されるため、短期的な世論に左右されにくく、安定的で熟慮された議論を行うことが期待されています。
上院の役割
1.立法機能
法案の審議と承認: 上院は下院と同様に法案を審議し、承認する権限を持っています。法案が上院と下院の両方で承認されなければ、大統領に送られて法律として成立しません。
法案の修正: 上院は下院から送られてきた法案を修正することも可能です。この場合、修正後の法案を再度下院で審議する必要があります。
2.大統領の権限に対するチェック
条約の承認: 上院は大統領が締結した国際条約を審議し、承認する権限を持っています。条約が発効するためには、上院の3分の2の賛成が必要です。これにより、外交政策において上院が重要な役割を果たしています。
高位公職者の指名承認: 大統領が指名する連邦政府の高位公職者(大臣、連邦判事、大使など)の任命は、上院の承認を必要とします。上院は候補者に対する聴聞会を開き、最終的に承認か否決かを決定します。
3.弾劾裁判の実施
弾劾裁判の裁判官役: 下院が大統領や他の高官を弾劾する場合、上院はその裁判を行う役割を担います。上院での弾劾裁判では、上院議員が陪審員の役割を果たし、弾劾が成立するかどうかを判断します。弾劾が成立するためには、上院議員の3分の2以上の賛成が必要です。
4.予算関連法案の審議
下院が主に予算関連の法案を提出する権限を持っていますが、上院も予算案を審議し、修正することができます。上院と下院で意見が異なる場合は、両院合同委員会で合意を図ります。
5.外交・安全保障政策への関与
上院は国防や外交に関しても重要な役割を果たします。特に上院外交委員会は、外交政策の監督を行い、大使や外交官の任命を審査する権限を持っています。
6.連邦司法官の承認
上院は、大統領が指名する連邦判事(最高裁判所を含む)の任命を承認する役割も持ちます。これは、アメリカの司法制度における重要なチェック・アンド・バランスの一環であり、特に最高裁判所判事の承認プロセスは政治的に注目を集めることが多いです。
このように上院はアメリカの政治制度において非常に重要な役割を担っており、特に大統領の権限をチェックするための強力な機能を有しています。
下院の選挙制度
• 選出する役職:下院議員(全435議席)
• 選挙方式:小選挙区制(1区1人を選出)
• 各州の人口に応じて割り当てられた選挙区ごとに1人を選出。
• 任期は2年で、全議席が毎回改選。
• 下院は予算案の審議や法律の立案に強い権限を持つ。
下院の特徴
下院は、アメリカ国民の意思を最も直接的に反映する立法機関であり、法律の作成、財政の監督、行政の監視、弾劾の発動など多岐にわたる権限を持っています。特に予算に関する決定や国民の代表としての役割が重視され、上院とともにアメリカの政治システムにおける重要な役割を果たしています。
下院の役割
1. 立法機能
法案の提出: 下院議員は法律を提案する権限を持っており、議会に提出される多くの法案は下院から始まります。法案は下院で審議され、可決された後、上院に送られます。
法案の審議と修正: 下院は、提案された法案を委員会で審議し、修正を行うことができます。法案が下院を通過するためには、過半数の賛成票が必要です。
2. 予算と財政に関する権限
歳入法案の発案権: アメリカの憲法では、予算や税に関する法案は必ず下院から提出されることが定められています。これは、下院が国民を直接代表する機関であるため、財政に関する問題はまず下院で議論されるべきだという考えに基づいています。
予算審議: 下院は国家予算の編成に関与し、政府の支出に対する監視役を果たします。
3. 弾劾の発動権
弾劾手続きの開始: 下院は、大統領やその他の高位公職者に対する弾劾手続きの開始権を持っています。下院が弾劾決議を可決すると、弾劾裁判は上院に送られます。下院は、弾劾の「告訴者」としての役割を担い、高官が職務を放棄したり不正行為を行った場合に弾劾を行う権限を有しています。
歴史的事例: アメリカ史上、複数の大統領が下院によって弾劾決議を受けましたが、その後の裁判で上院が罷免を承認しなかったため、辞任には至っていません(例: アンドリュー・ジョンソン、ビル・クリントン、ドナルド・トランプ)。
4. 行政の監視とチェック
調査権限: 下院は政府の行動や政策を調査し、監視する役割も果たします。下院委員会が政府の行動に関する聴聞会を開催し、証人の召喚や記録の提出を要求することが可能です。
監視機能: 行政部門の予算執行や政策実行を監視し、不正や不透明な行為がないかを調査することで、行政をチェックします。
5. 国民の代表としての役割
人口に応じた代表: 下院は人口比例で議席が割り当てられており、州ごとに定められた選挙区から議員が選出されます。これにより、下院は国民全体の意思をより直接的に反映する機関として機能します。
短い任期: 下院議員の任期は2年と比較的短く、選挙が頻繁に行われるため、議員は常に国民の意思を反映する責任を負います。この短期的なサイクルにより、議員は有権者の意見や関心に敏感であり続けることが求められます。
6. 上院との違い
人口比例の代表制: 上院が各州に平等な2議席を割り当てているのに対し、下院は人口に応じた代表を選出します。これにより、大都市や人口の多い州はより多くの議席を獲得し、少数の州の声も尊重しつつ、国全体の人口動向を反映します。
立法プロセスの初期段階: 多くの法案が下院から始まり、予算関連の法案は必ず下院から提出されるため、下院は立法プロセスの初期段階で主導的な役割を果たします。
7.下院のリーダーシップ
下院議長(Speaker of the House): 下院の最高位の役職であり、議会の運営を指揮する役割を担います。下院議長は、立法の優先順位を設定し、法案の審議や議論を円滑に進める責任を負っています。また、大統領の後継順位では副大統領に次いで3番目に位置しています。
政党の指導者: 各政党には多数派、少数派のリーダーがおり、議員間の調整や法案の戦略的な進行を図ります。
まとめ
アメリカ合衆国の選挙制度は、主な選挙制度は以下の通りです。
1. 大統領選挙
- 選挙人団制度(Electoral College): アメリカの大統領選挙は直接選挙ではなく、選挙人団を通じて行われます。各州には人口に応じた選挙人が割り当てられ、州ごとの一般投票で勝者がその州の選挙人票をすべて獲得します(勝者総取り方式)。合計538票の選挙人票のうち、過半数(270票以上)を獲得した候補が大統領に選ばれます。
- 州ごとの影響: 大規模な州ほど選挙人票が多いため影響力が大きく、接戦州(スウィング・ステート)が選挙の行方を左右することが多いです。
2. 連邦議会選挙
- 上院: 各州から2名ずつ、計100名の上院議員が選出されます。任期は6年で、2年ごとに3分の1が改選されます。選挙は州全体で1人の候補を選ぶ小選挙区制で行われます。
- 下院: 下院は435名の議員で構成され、各州の人口に応じて議席が配分されます。各議員は小選挙区制で選ばれ、任期は2年です。選挙区は州内で区分けされ、各区から1名が選出されます。
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